11.21共謀罪を考える集会

テロ対策として共謀罪が必要との声が政府内で高まる中、11月22日(土)、大阪弁護士会が主催する「共謀罪を考える集会-共謀罪・通信傍受・司法取引で刑事司法はどう変わる?」が大阪弁護士会館2階ホールで開催され、225名が参加した。
(講師とパネリストの発言内容はメモにもとづいています。1字1句正確に再現しているわけではなく、発言趣旨であると考えてください。)

写真 基調報告 原田さん


13時30分開会し、第1部で原田宏二さん(元・北海道警察。2004年北海道警察の裏金問題を告発)は以下のように基調報告を行い、警察の違法捜査・腐敗を明るみにし、警察権力の拡大に警鐘を鳴らした。
1. 警察権力の拡大について
 将来起きる犯罪の捜査を積極的にやるべきだ(事前捜査積極説)、と主張する学者が増えている。
 都道府県警察とはいっても、警察庁が人事と金を握っており、実態は国家警察である。
 私が警察官になったとき、警察権の限界理論(私生活に入り込まない等)を学んだ。だが現在の警察学校のテキストでは、この理論の一部を否定している。
 警察へのチェック機能がほとんどない。
2. グレーゾーン捜査の拡大について
 監視カメラ映像、GPS装置を捜査対象車両に取り付け、DNAデータの採取等、法的根拠を欠く捜査が拡大している。
 犯罪立件のためではなく、情報収集のためにガサ入れを行っている。
3. 司法取引
 かつて暴力団に働きかけて押収拳銃数を水増しした。
 警察官が作成する文書には虚偽公文書が多い。

 

写真 基調報告 原田さん


4. 警察の腐敗
 逮捕しても不起訴になる事例もよくあり、これは「隠れ冤罪」とでも言うべきものだ。
 刑法犯はH14年がピークで、今はその時の半分に減っている。だが凶悪犯罪を大きく取り上げるTVの影響で国民は不安になっている。
 検挙率は30%に低下している。

写真 パネルディスカッション 左から永嶋さん 日比野さん 原田さん  


第2部のパネルディスカッションは太田健義弁護士がコーディネーターを務めて14時45分に始まり、3人のパネリストが発言した。
最初に永嶋靖久弁護士から共謀罪についての基本的な説明があった。
 共謀罪は過去3回国会に上程されたが、いずれも廃案になっている。
 来年5月のサミットに向け、共謀罪法案はいつでも国会に出せる状態である。
 既遂(=犯罪を実行し目的を遂げる)処罰が原則。未遂を処罰するのは、殺人・放火・強盗など数は少ない。予備(=犯罪の準備行為) を処罰するのは、内乱・外患・私戦・殺人など。共謀(=2人以上で相談)は予備の前の段階での行為。
 犯罪実行のための相談をするだけで共謀罪にあたる。
 かつて政府が提案した共謀罪法案は4年以上の懲役等を対象とするもの。2006年上程のときは619の罪が対象となり、あまりに多いため政府委員が答弁できなかった。
 同様の法案の場合、現在では共謀罪が適用される罪は700にのぼる。(内訳は刑法が141罪種、その他は特別刑法)
 共謀を立証するため通信傍受で監視することになる。
 アメリカでは冤罪事件の原因で一番多いのは司法取引による虚偽情報である。アメリカでは司法取引の見直しを進めている。
 政府は、国際連合条約が重大犯罪について共謀罪を設けるように求めていることを根拠にしているが、この条約はマネーロンダリングや人身売買に関する条約でテロ対策とは関係がない。

 

写真 パネルディスカッション 左から永嶋さん 日比野さん


その後、3人のパネリストから以下の発言があった。
日比野敏陽さん(前・新聞労連委員長)
 警察のグレーゾーン捜査については十分な報道がなされていない。
 新聞労連の学習会で共謀罪の問題を取り上げたことがある。
 仕事で最も大事なところに影響する。警察官や検察官への取材がやりにくくなる。事件や司法に関する報道が変わってしまう。
 秘密保護法により、公務員の萎縮が感じられる。
 国民に知らせるべき情報について、公務員同士が話をすると共謀罪に問われるおそれがある。
 犯罪が減少していても、国民の体感治安は悪化している。「安心安全のため」「特殊詐欺防止のため」との言い方で共謀罪の必要性を宣伝すると、国民に浸透しやすいことが心配だ。

原田宏二さん
 組織犯罪(=暴力団)の検挙数が落ちている。かつては取引により情報収集していたが、暴力団側がこれを拒否するようになり、情報が得られなくなったからである。
 かつては取り調べの過程で余罪が出てきて事件を解決することがあった。だが取り調べの可視化で余罪追及がやりにくくなった。
 だから共謀罪で新たな犯罪が作りだされることは警察にメリットがある。
 警察は潜入捜査を行っている。公安は情報収集が目的であり、立件はあまり考えていない。身分を隠して組織メンバーに近づき、弱点を調べ上げてそれを突き、スパイに仕立て上げる。
 左翼衰退により、公安は「客」がいなくて困っている。捜査対象をスパイやテロ対策にシフトしている。
 警視庁外事3課の文書がネット上に流出したことがあり、この時、警察はモスクに出入りする人の尾行・監視を行った。

 冤罪の被害者は(特別な人ではなく)一般の市民である。

永嶋靖久さん
 悪徳企業前での不買呼びかけビラ配布を相談すると、共謀罪が成立することになる。
 共謀罪と司法取引が結びつくと危険である。共犯者の自白(=他人を密告)があれば、証拠は不要となる。
 複数の被疑者に対して警察は「誰が最初に取引してくれるかな」と言えばよい。
 「○月○日ごろ、このあたりで犯罪の相談をした」というあいまいな密告でも有効となり、これに対してアリバイは成立しなくなる。
 被疑者の弁護人は「司法取引するな」とは言えない。
 政府が共謀罪の根拠とするのはマフィア犯罪に関する条約であるが、外務省HPには「資金洗浄対策は万全」と書かれている。共謀罪は不要ということになる。
 フランスのテロ対策は進んでいるにもかかわらず、テロが起こった。共謀罪がテロ対策になるというのは疑問である。
 共謀罪や司法取引は、他人を信用できない息苦しい社会を生み出す。
 自分は悪いことをしていないので盗聴されてもかまわない、という人がいるが、その結果、思想信条が抑圧される。
 共謀罪で犯罪が減らせるかは疑問である。
パネルディスカッションは盛り上がったため、集会終了は予定を30分オーバーして16時30分となった。


写真 パネルディスカッション 左から原田さん 太田さん